日本三大蕎麦と江戸蕎麦御三家。
ともに同じ代表的なそばの銘柄ですが、その内容はまるで異なるものです。
順番にまとめていきたいと思います。
日本三大蕎麦と江戸蕎麦御三家とは
名前が似ているので混同してしまいそうですが、全く異なるものです。
ポイント
- 日本三大蕎麦:全国各地の郷土料理で代表的な3つのそば
- 江戸蕎麦御三家:江戸時代に普及した代表的な3つのそば
それぞれ見ていきましょう。
日本三大蕎麦とは
郷土料理として、代表的な3つのそばのことで、種類は以下の通りです。
- 戸隠そば
- 出雲そば
- わんこそば
郷土が違うので、特徴や食べ方も異なります。
順に見ていきましょう。
1.戸隠(とがくし)蕎麦
現在の形式の蕎麦(麺料理としての蕎麦)が庶民に普及し始めたきっかけは、江戸の町での蕎麦ブームになります。
ですが、そもそもの蕎麦発祥の地は、長野県が挙げられます。
※諸説あります。
その長野県にある戸隠(とがくし)という地域の郷土料理が、「戸隠そば」です。
戸隠蕎麦の特徴
非常に多くの特徴を持ちます。
- 挽きぐるみ(ソバの甘皮を取らずに挽く)の蕎麦粉を使用すること。中には玄そばまで挽き込むこともある。
- 延すとき、四つ出し(四角く伸ばす)をせず、丸延しすること。
- 麺棒は一本のみ。
- 水を殆ど切らずに出すこと。
- 「ぼっち盛り」と呼ばれる独特の盛り付けをすること。「ぼっち盛り」とは、一つのざるに5ないしは6束、開口部のつぶれた馬蹄形状に盛る形式をいう。ぼっち(束)の数は戸
- 隠内の地域で変わる。
- 根曲り竹で編まれた円形のざるに盛ること。
- 「ざる」であっても海苔がかけられないこと。
- 薬味には、今は「信州の伝統野菜」に認定されている地元の「戸隠大根」と呼ばれる辛味大根を使うこと。
- 蕎麦が出てくるまでの間に大抵は自家製の漬物などが供されること。
- 天ぷらにはワラビやコゴミといった地元で獲れる山菜類がふんだんに使われること。
また、ざるそばでありながらも、海苔がのらないという特徴もあります。
戸隠蕎麦の食べ方
通常のつけ蕎麦と同様に、蕎麦をつけ汁につけて食べます。
一口状になっているので、食べやすいのも特徴です。
2.出雲(いずも)蕎麦
出雲地方では祭事などの際に、蕎麦を食べる習慣がありました。
ただし、昔は「蕎麦は庶民の食べ物で、役人などの高貴な立場の人間は食べない」という考えが一般的でした。
イメージとしては「卵かけご飯」みたいな位置づけだったようです。
しかし、出雲松江藩の藩主であった松平治郷という人物が、根っからの蕎麦好きでした。
茶席での茶懐石に蕎麦を取り入れるなどし、蕎麦の地位向上に大きく貢献したのです。
このような背景も後押しして、出雲での蕎麦文化が発展したと考えられます。
出雲そばの特徴
- ソバの実を皮ごと挽くため蕎麦の色が濃く香りが強い
- 出雲蕎麦には、冷たい割子蕎麦と温かい釜揚げ蕎麦がある
- 有名なのは割子蕎麦
出雲そばの食べ方
出雲そばには、割子蕎麦と釜揚げ蕎麦があり、両者で食べ方が異なります。
割子蕎麦は、丸いお重が3つ重なった形で提供されます。
通常ならつけ汁に蕎麦をつけて食べるところですが、出雲蕎麦はつけ汁を蕎麦に直接ぶっかけてしまいます。
そうして1段目を食べ終わると、1段目に残った汁を2段目の蕎麦にぶっかけます。
3段目も同様にして食べます。
このように汁を1段目~3段目まで使い回すという独特な食べ方が割子蕎麦の基本です。
一方、釜揚げ蕎麦の場合は、茹でた蕎麦に茹で汁をかけた状態で提供されます。
つけ麺の湯だめ熱盛りや、釜揚げうどんのような形です。
蕎麦麺をつけ汁や薬味で味わいます。
3.わんこそば
恐らく日本三大蕎麦の中でも最も知名度が高いでしょう。
その由来は、殿様に蕎麦を提供する際が起源とされています。
※諸説あります。
「高価な器じゃないと失礼だ!」ということで、漆器に少量の蕎麦を入れて出したところ、殿様が大変気に入って繰り返しお代わりしたのが始まりとする説です。
わんこそばの特徴
給仕さんが、小さいお椀に蕎麦を入れ、蕎麦を食べると、また給仕さんが次の蕎麦をお椀に入れ、蕎麦を食べると、また・・・
を繰り返し行う、蕎麦の食べ放題スタイルです。
その特性上、大食い大会で使用されることも多いですね。
わんこそばの食べ方
誰でもご存知かと思いますが、延々と給仕される蕎麦を食べるだけです。
重要なのは終わりの合図です。
終わりの合図がない限り、ひたすら蕎麦が給仕されてしまいます(笑)
「お椀に蓋をする」ことで終わりの合図となります。
お店によっては、蓋をする隙を与えずに次の蕎麦を入れてくるケースもあるようなので、素早く蓋をして下さい(笑)
江戸蕎麦御三家とは
江戸蕎麦御三家は日本三大蕎麦とは違って基本的には食べ方は同じです。
それぞれの違いは蕎麦麺と味付けにあります。
- 更科蕎麦
- 藪蕎麦
- 砂場蕎麦
それぞれ見ていきましょう。
更科(さらしな)蕎麦の特徴
一番粉の中でも、より純度の高い更科粉を使うものを「更科蕎麦」と呼びます。
最大の特徴は「麺が白い」ことです。
更科粉にはソバの実の色素成分がほとんど含まれていないため、色が白くなります。
また蕎麦の風味が少なく、麺が切れやすいことも特徴です。
蕎麦の食感ももっちりとしていて、私も最初食べたときは「これが蕎麦?」と違和感を感じた程、多くの人が食べ慣れている蕎麦とは違った味わいの蕎麦です。
また、つけ汁は甘口です。
名前の由来は、最初に提供を始めたお店の屋号に「更科」という名前が入っていたため、店の屋号をとって更科蕎麦と呼ばれるようになりました。
藪(やぶ)蕎麦の特徴
更科蕎麦が白い麺であったのに対し、少し緑がかった麺であることが多いのが「藪蕎麦」です。
「辛口」のつけ汁が大きな特徴です。
名前の由来は、藪蕎麦発祥のお店「蔦屋」の周りに、藪が生い茂っていことに由来します。
砂場(すなば)蕎麦の特徴
江戸蕎麦御三家とは言うものの、発祥は大阪の「砂場蕎麦」です。
「日本最古の麺類発祥の地の石碑」が大阪にあり、そこには「ここに砂場ありき」と刻まれています。
このことからも江戸蕎麦御三家の中で、最も歴史の深い蕎麦であることが分かります。
つけ汁は更科~砂場の中間ぐらいで、一番オーソドックスな甘辛さになっています。
名前の由来は、砂場蕎麦発祥のお店が資材置き場(砂場)であったことに由来します。
ちなみに「砂場蕎麦」は商標登録されています。
その系列店・系譜を辿ったお店以外は勝手に名乗ることができません。
藪や更科は商標登録されておらず、通販品で砂場はないのに、藪や更科の名称が入った商品が多数販売されています。
まとめ
日本三大蕎麦と江戸蕎麦御三家、名前は似ていますが、その意味は異なるものです。
全国津々浦々のそばを楽しんでいきたいものですね!