蕎麦屋で蕎麦打ちをする店主の姿は、なんだかカッコイイですよね。
手際よく作業して、蕎麦が出来上がっていくのを、つい見入ってしまうほどです。
そんな姿を見ていると、
- 「脱サラして蕎麦屋をしてみようかな・・・」
- 「蕎麦屋で繁盛したら儲けられそうだな・・・」
なんて思ってしまいますね。
実際のところ、個人店の蕎麦屋は儲かるのでしょうか。
そして、どのくらいの年収を稼げるのでしょうか。
詳しく見てみましょう。
蕎麦屋で年収はいくら稼げる?実際に計算してみた
蕎麦屋を始めたら、一体いくらの年収になるのか気になるところですよね。
今回は、厚生労働省の平成24年度生活衛生関係営業経営実態調査のデータを用いて計算してみました。
- そば専門店一日の平均客数:32.4人
- 平均食事単価:1,116円
ここから導くと、1日の売上が36,158円になります。
1年間毎日、この売上があった場合、合計で13,197,816円です。
なんと1,000万円超えの売上!!
なんだか夢が膨らみますね。
でも、これは1年間の売上の金額です。
ここから材料費やら、経費やら、いろんなものが引かれていくと・・・
店主の年収はどうなるのでしょうか。
蕎麦粉の選び方で変わる原価
「蕎麦屋をするなら、こだわりの蕎麦粉を選んで手打ちするんだ!」なんて希望を持っている人も多いのでは?
蕎麦の命とも言える蕎麦粉。
選ぶものによって商品の原価が大きく変わってきます。
蕎麦屋の原価(材料費)は売上の20%ほどと言われています。
これは、一般的な二八蕎麦(蕎麦粉8割、つなぎの小麦粉2割の配分)で、外国産の蕎麦粉を使った場合です。
他の飲食店の原価は30%が目安です。
ですので、蕎麦屋を起業した場合は、他の飲食店と比べて10%分は儲かりやすいということになります。
一方の国産の蕎麦粉を使った場合は仕入れる値段が高くなるので、原価が30%を超えてきます。
こだわりの国産蕎麦粉を使った十割蕎麦をメイン商品にすると、原価だけですごいことになりそうです。
材料にもこだわりたいところですが、それだけでは蕎麦屋はできないのが現実です。
忘れてはならない経費の存在
蕎麦屋を起業してかかるお金は、材料費だけではありません。
- 材料費:20%
- 人件費:30%
- 家賃:10%
- 水光熱費:5%
- 諸経費:10%
- 利益:10%
売上に対して、これだけの割合の経費が目安と言われています。
削ろうと思えば人件費などは少なくできますが・・・
その分、オーナーであるあなたの負担が大きくなることが予想されます。
開店前から仕込みで準備した後に、お客さんの接客もして・・・と1人で切り盛りするのは正直大変です。
蕎麦打ちにも手間と時間がかかります。
どんなに小さいお店でも、数人は人を雇う必要がありそうですね。
もしくは、田舎に移住して自宅兼蕎麦屋みたいにすると家賃は減らせるかもしれませんね。
へんぴな山奥でも人気のお店はありますよね。
水が良かったり、浮いた家賃分をこだわりの原価にあててたりかは分かりませんが、地方は地方でもチャンスはありそうです。
地方なら、都会に比べて物件にかかる費用は少なく抑えられそうです。
しかし、ここで挙げたのは、ほんの一例です。
どんな蕎麦屋をやっていくかによって内訳は変わってきます。
参考程度に留めておいてくださいね。
蕎麦屋店主の年収はいくら?
蕎麦屋1日の売上が36,158円という計算が出ていましたね。
これを基準にして、上記の経費を引いていくと・・・
- 75%が経費:-27,119円
- 10%が利益:3,615円
- 残りがオーナー取り分:5,424円
売り上げた金額のうち、実に75%が支払いで消えていく分になります。
ずっと蕎麦屋を続けていくために、残しておくお金も必要なので、10%分は利益として確保しておきます。
すると残ったのが、たった5,424円・・・
オーナーの日給が5,424円しかないなんて!!
それを365日続けたら、年収は1,979,760円。
汗水たらして毎日働いても、これだけの年収では正直厳しいですよね。
手打ち蕎麦の店だったら尚更、手間暇かけたのに割の合わない仕事になってしまいます。
国税庁平成29年分民間給与実態統計調査結果では、サラリーマンの平均年収は432万円と報告されています。
脱サラして蕎麦屋を起業すると、年収が大きく下がってしまう可能性があるということですね。
どうしても蕎麦屋がやりたいという強い気持ちがなければ、途中で挫けてしまうかもしれません。
しかし、どのお店もこうなるわけではありません。
今回は平均客数と平均客単価から出しているので、これ以上のお店も、これ以下のお店もあるはずです。
繁盛店の蕎麦屋店主は、様々な工夫をしています。
- お客さんを増やす
- 利益が出やすいメニューを売る
- 経費を減らす
- 開業時の融資金額を最小にする
あなたが開業する蕎麦屋も、平均以上に売れる繁盛店になれば、年収をもっと伸ばしていけます。
蕎麦打ちと同様、そんな簡単にはいかないですが、対策次第で儲かるお店になる可能性は十分にありますよ。
なぜ脱サラ後に蕎麦屋が選ばれるのか?
個人店の蕎麦屋で大きな年収を得るには相当な努力が必要です。
それでも、数多くの飲食店の中から蕎麦屋が選ばれるのは理由があります。
そこには高い理想と憧れがあるようですよ。
蕎麦打ちの技術を極めていく過程が楽しい
立派な蕎麦職人になるには「木鉢三年、のし三ヶ月、包丁三日」もかかると言われています。
よく蕎麦屋の店頭で見かける、伸ばして切る作業のところは、「のし」と「包丁」の部分です。
肝心の蕎麦粉の割合や水加減の調整が一番難しいところです。
温度や湿度によっても味に差が出てしまいます。
ですので、蕎麦作りには長年の経験と勘が必要になってくるのです。
長い修行を積んで、念願の蕎麦屋の店主になったとしても、まだまだゴールではないのかもしれませんね。
どんどん美味しい蕎麦を作れるようになる過程が醍醐味となっています。
職人のイメージが強く、蕎麦打ちの姿がカッコイイ
どんな職業においても、職人が仕事をする姿はカッコイイですよね。
蕎麦屋にも、そんなイメージを持っている人が多いようです。
美味しい蕎麦を作れるようになるまでに、長年の苦労があるわけです。
それを形にして、多くのお客さんに喜んでもらえるのは、とても素敵なことですよね。
利益や効率を重視するなら、製麺機に頼る方法もあります。
それでも、職人気質で妥協をしない姿勢が、またカッコイイと思えてしまいます。
蕎麦打ちは、マラソンや登山で得られる達成感に似ているようです。
それと自分の人生を重ね合わせているのかもしれません。
サラリーマンにも、他の飲食店にもない魅力があるからこそ、蕎麦屋が選ばれるのでしょうね。
まとめ
蕎麦屋が儲かるか儲からないかは、やってみないことにはわかりません。
長い時間をかけて手打ち蕎麦を作れるようになっても、上手にお客さんを呼んで売上を出さないと年収アップには繋がりません。
繁盛してずっと続けていける蕎麦屋は、ほんの一握りです。
理想や憧れだけで起業するのではなく、そこから得られる年収までも計画した上で、蕎麦屋を始めてみてくださいね。