「焼肉を食べた後のシメは冷麺でしょ!」といえるほど、冷麺文化は日本にも根付いてきています。
でもちょっと待って!
- 冷麺の本場って、韓国だよね?でも日本で有名なのは盛岡冷麺・・・?
- 韓国冷麺と盛岡冷麺って、なにが違うの?
- 焼肉のシメで食べる冷麺って、どっちの冷麺?
こんな素朴な疑問が浮かんできませんか?
今回はこの疑問を解消すべく、冷麺の由来や日本へやってきた歴史について深掘りしていきます。
ちょっとした豆知識で、何気なく食べていた冷麺がきっと何倍もおいしくなるはず!
あわせてチェック
韓国冷麺と盛岡冷麺の違い~原料~
韓国冷麺のルーツは、実は北朝鮮なのです。
(国際情勢を考えるとドキッとしちゃいますが、食文化に罪はないってことで・・・)
北朝鮮で発展した冷麺が、朝鮮戦争の際に南(現在の韓国)へ逃れた北朝鮮出身者によって、本格的に広められたといわれています。
韓国冷麺という名称が広く認知されていますが、朝鮮半島全域で発展してきたものなんですね。
ちなみに北朝鮮では寒い冬に温かい室内でよく食べられていました。
ですが、現在の韓国では夏の食べ物(日本の冷やし中華のような位置づけ)として普及しています。
つまり、いつ食べてもおいしいってことです(笑)
盛岡冷麺は2種類の韓国冷麺の味をうまく融合し、さらに日本人好みにアレンジされながら広まったものです。
韓国冷麺には2種類の味がある
韓国冷麺には、平壌(ピョンヤン)発祥の水冷麺(ムルレンミョン)と、咸興(ハムフン)発祥のビビン麺の2種類があります。
どちらの冷麺も、麺の原料にそば粉を使用しているのが特徴です。
平壌冷麺はそば粉を主原料に緑豆粉を合わせて使用しており、黒っぽくて太めの噛みきりやすい麺になっています。
咸興冷麺はそば粉に加えてトウモロコシやジャガイモなどのでんぷんを使用しており、細くて白っぽく噛みきりにくい麺なのが特徴です。
製麺機の発展によって徐々に細い麺が好まれるようになっていきました。
現在では細長い麺が、韓国冷麺の特徴になっています。
盛岡冷麺は日本人好みにアレンジされたもの
盛岡冷麺は韓国冷麺を由来とし、見た目のおいしさも含めて日本人好みにアレンジされながら広まってきたものです。
麺の主原料は小麦粉を使用しており、黄色みがかった透明感のあるコシの強い太麺なのが特徴です。
日本に広まり始めた当時は、そのコシの強さから・・・
「ゴムのような麺」と酷評を受け、なかなか受け入れられなかった歴史があります。
そこからさらに日本人の口に合うよう改良され、今ではつるつるとした喉ごしの良さが、盛岡冷麺の良さとして広く親しまれるようになりました。
韓国冷麺と盛岡冷麺の違い~具材・スープ~
韓国冷麺と盛岡冷麺の違いは麺だけでなく、スープやトッピングとして合わせる具材にもあります。
具材によってスープの味や辛さを調節でき、自分好みにアレンジしやすい点も冷麺の魅力のひとつですね♪
韓国冷麺の具材・スープ:特徴の異なる2種類の味
平壌発祥の水冷麺(ムルレンミョン)は、具材に味付けしてある肉類やゆで卵、キムチ、ナシをのせ、透明なスープをかけて仕上げるさっぱりした冷麺です。
スープは高麗キジからとったダシとトンチミ(大根と水キムチの汁)を合わせたもので、コクが強いのが特徴です。
辛さは具材のキムチによるもので、キムチの量を調節することでスープの辛みをアレンジできます。
もう一つの韓国冷麺である咸興発祥のビビン麺(ピビンネンミョン)は、コチュジャンや酢、ごま油を合わせた調味料を麺と和え、肉類、ゆで卵、キュウリの千切りなどを盛り付けて食べる辛みの強い冷麺です。
スープはなく、まぜそばのように具材と麺をよく混ぜながら食べるのが特徴で、コチュジャンの辛みがダイレクトに伝わる、パンチの効いた味がやみつきになります。
盛岡冷麺の具材・スープ:韓国冷麺を融合させたおいしさ
盛岡冷麺のスープは、平壌冷麺で使用される高麗キジのダシよりも、さらにコクと旨味の強い牛骨と鶏ダシを使用しています。
(というか、日本ではキジ食が一般的ではありませんしね・・・)
具材のメインは「大根とキャベツのキムチ」で、チャーシュー、ゆで卵、きゅうりの三枚酢漬けがのせられています。
お店によってはスイカがのっていることもあったりで、「なんでスイカ??」とびっくりすることも(笑)
※スイカが具材の理由:ナシをのせて食べる平壌冷麺のなごり。ナシは秋の果物のため、日本では夏に人気のスイカが代用されたのがはじまり。季節感や色合いだけでなく、辛みをリセットしてくれる役割もあり。
平壌冷麺と同様、キムチの量で辛みを調節できるのが特徴です。
注文の際に「キムチ別盛り」と注文することで自己流にアレンジしやすくなります。
盛岡冷麺は、麺のコシと喉ごし、コクの強いスープ、キムチの辛みの三つの味が絶妙にマッチした、酸味と辛みが魅力の冷麺です。
スープやキムチは平壌冷麺由来、つるっとした麺や、具材にキュウリをのせて楽しむのは咸興由来と、2種類の韓国冷麺のおいしさを融合させたのが盛岡冷麺だといえます。
盛岡冷麺はいつ誕生したの?その歴史をひも解くと・・・
日本で初めて韓国冷麺を提供したお店は、実は盛岡市ではないんです。
意外な事実・・・
1939年(昭和14年)神戸市で平壌出身者が開業した「元祖 平壌冷麺屋」が朝鮮式の冷麺を提供する日本で最古のお店です。
日本各地でこの冷麺をアレンジしたものが誕生しましたが、最もポピュラーになったのが盛岡冷麺なのです。
1954年(昭和29年)盛岡の麺職人である青木輝人氏が「食道園」を開店しました。
この際に、平壌冷麺と咸興冷麺を融合させたものを創作したのが盛岡冷麺の始まりといわれています。
しかし、このころはまだ「盛岡冷麺」という名称はありませんでした。
「盛岡冷麺」と初めて名乗ったのは1986年(昭和61年)に開かれた『ニッポンめんサミット』です。
「ぴょんぴょん亭」として出展された盛岡冷麺のブースは大反響を呼び、「盛岡冷麺」の存在が広く認知されるようになりました。
翌、1987年(昭和62年)に「ぴょんぴょん舎」がオープンし、現在も盛岡冷麺の名店として人気を誇っています。
ちなみにこの『ニッポンめんサミット』が開催された10月17日は「盛岡冷麺の日」に制定されています。
皆さん、10月17日は冷麺を食べましょう!
(夏じゃないのがまたおもしろいですね♪)
盛岡冷麺は国から認められた「本場の味」
韓国冷麺と盛岡冷麺の違いがわかったところで・・・
もう一つの疑問「本場の味ってどっちのこと??」について。
韓国冷麺は、まず間違いなく本場の味!といえますね。
平壌冷麺も咸興冷麺も、どちらも歴史は古く、朝鮮半島で長きにわたって親しまれてきた味です。
では盛岡冷麺はどうか。
盛岡冷麺は、讃岐うどんや札幌ラーメン、長崎ちゃんぽんと同様に・・・
国の行政機関である公正取引委員会が日本の名物麺料理として「特産」や「名産」の表示を認めています。
つまりどういうことかというと、「盛岡冷麺」の“本場”は盛岡だ!と認めたということです。
韓国冷麺も盛岡冷麺も、どちらも“本場の味”だということですね♪
確かにそれぞれ違ったおいしさがありますね!
焼肉店でシメに出される冷麺は、お店によって韓国系のものと盛岡系のものがあります。
冷麺といって提供されたものが韓国冷麺なのか盛岡冷麺なのか、食べながら想像してみるのも楽しいですね♪
個人的には・・・
やっぱり盛岡冷麺の方が好きかな♪
おまけの豆知識:韓国冷麺はハサミを使う?
盛岡冷麺ではあまり見られませんが、韓国では冷麺を食べる際に、長い麺をハサミで食べやすい長さに切って食べる文化があります。
スープのなかにハサミを突っ込み(!)、ザクザクと切っていく様はなかなか見応えがあります(笑)
ただし、これは韓国特有の文化であり、同じ朝鮮半島でも北朝鮮ではハサミは使いません。
むしろ北朝鮮では、「幸せを切る」「縁を切る」として好まれない傾向があります。
同じ朝鮮半島でも文化の違いがあるって、ちょっと不思議な感じがしますよね。
まとめ
「冷麺」とひとくくりにしてしまいがちですが、味の違いや特徴があったなんて驚きですね!
最近はインスタントでも手軽に本場の味が楽しめるこだわりの商品がたくさんあります。
韓国冷麺と盛岡冷麺の違いを知ったうえで、色々な商品を食べ比べてみるのも楽しそうですね!